虚無という液体が糞袋をめぐる

┃受験をした結果、虚無になりました

 これは何一つ嘘を申し上げてはいない一文なのですが、やはり「また誇大妄想に憑りつかれやがって」と統合失調症の診断書を書いて貰えてしまいそうな一文なので、もうすこし詳しく述べることにいたします。いや統合失調症の診断書は欲しいです。

 入居の際に所得制限がある(もちろん世帯収入~万円以上は不可というもの)オンボロアパートのスラムに住まい、当然そのような地域、教育のレベルなぞ高くなく、小中学時代では前日に適当に宿題をこなすだけでそれなりの成績と内申点が貰えるという環境で両親から2人掛かりで暴力を振るわれたり鼻の骨が折れたり頬が内出血したり飯を抜かれたり「〇〇高校以下なんて行きやがったらそんなバカ家から追い出すからな覚悟しとけよ」と言いながら本人はそれより偏差値が20は下の高卒だったり勉強していて消しゴム等が落ちると「アーーーッハッハッハ落~~~~~~~ちた落ちた!!!」と囃し立てたり食事の際に白米から先に箸をつけると「あたしの作った飯はそんなに食えないってか!!?」と急に泣きながらテーブルを引っくり返されたり「大事なものは何だ!」と聞かれ応えると「次あたしに逆らったらブッ壊してやるからな!!」と叫ばれたりしながらのんびりと殺人衝動を高めておりました。マジで友人どころかマトモに会話する人間すら一人もおらず自分の人生の最底辺期であったにも関わらず「死のう」とも思わなかったし何なら「殺してやる」の精神のほうが強かったんですよね。何故だろう今の希死念慮。何処から来たのだろう今の希死念慮

 

 閑話休題。明らかに関係のない怨嗟が混入してしまったことを深く陳謝いたします。

 

 そうして毎日ひいひい過呼吸になりながら「これが終われば母親と対等になれるんだ」と思いながら勉強しておりましたが全くと言っていいほど数学のセンスがなく、結局推薦で地元でトップクラスではあるもののちょっと不思議な5年制学校に入るというかたちで初めての受験が終わりました。あの、この「トップクラス」というの、自慢だと思ったやろ。思ったやろ。俺も自慢だったよ入学当初はさぁ。

  周りはザ・理系という感じの数学と工学のプロフェッショナルか勉強しなくてもサラリと数式を解いていく見た目はチャラ男(もしくは女)、頭は関数電卓。所詮スラム校のユルユル内申で滑り込んだ僕は初めてテストで「真ん中」の成績を取ってからもう驚く間もなくみるみるうちに成績を落としていった。いやそもそも「テスト前日以外に勉強をする」以外の勉強習慣が身に付いていなかったから当たり前の話なのですが…………受験期は後ろに竹刀持った母親がいて殴られると痛いからやってただけだし…………。

  それから主に飲食店のバイトの面接で「✕✕校なの?!すごいわねぇ!それなら仕事もすぐ覚えられるわね!」からの失望を何度繰り返してきたことか。何故そうするのか分からないルーチンワークが僕は出来ないんだ出来ないんだ出来ないんだ出来ないんだごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 

  だけども僕は「わたしはできる子なんだだってずっとそうだったもん私はできる子なんだできるんだ」という度の強い眼鏡を外すことができなかった。

  現実を見れなかった。自分を直視できなかった。成績表が分からなかった。人より劣っているから努力するという発想自体なかった。

  だってバカだったら家を追い出されるから。

  中学時代、それも受験期に掛けられたあの言葉は、呪いのような言葉だと思った。

 

  自分の場合5年制の学校というちょっと不思議な進路を辿っているのでこの時期に受験を、というか不思議な進路を辿っているひとたちでもふつうは夏前にはすべての受験や就職活動が終了していなければならないのですが、わたしは何故か今週受験をしておりました。理由は見りゃ分かんだろふつうじゃないんだよマイナス方向にな。

 おそらくだめでしょうというのが合格発表まで一週間ほどある今現在でもわかります。勢い余って「今から死ぬので貸りていた本を遺族に返させますゆえ住所を送ってください。直接お返しできず申し訳ありません。ありがとうございました」などという文面のメッセージをそれなりに好感を持ってくださり片道一時間掛けてスラムまで逢いに来てくださる異性の方に送ってしまうなどしています。勢いが余り過ぎです。本当に涙が出るほど申し訳なく思いました。

 

 どうでもいい。

 

┃虚無

 最悪です。どうでもいいのです何もかもが。目の前の真っ黒い未来、見えない未来、これからどうすればいいのかさっぱり解らない未来の前に、ちいさなよろこびやかなしみがほんとうにどうでもよくなってしまったのです。

 身体中に液体窒素を流し込まれたかのような、冷たいような熱いような感覚があります。もうずっと。これが身体中に詰まると、もう何もできず、ゆるやかに死ぬのを待とうというか、もう自殺すら面倒くさくなってくるというか、だいすきな文章を書くことすら既にもう飽きてきています。自分語り、何より好きなのにね。ナルシズムの擬人化だから。

 

┃虚無

 どうでもいいのです何もかもが。これは困った。今のところ来週の月曜日〆切、火曜日〆切の大タスク(卒業に関わるもの)、水曜日〆切の中タスク(金銭に関わるもの)、それから〆切はもうとっくに過ぎているが今週中には書かねばならぬ小タスク(卒業に関わるもの)と木曜日に合格発表があるのですが、どれもこれもまるでちっともやる気がしない。強いて言えばバスタオルをかたくかたく結んでじょうぶな梁に結わい、いつでも死ぬるよう準備だけはしておきたい。

 それからむかしむかしに約束した(絶対に先方は忘れている)シリウスの名刺をつくりたいのだが、大学全落ちした人間のデザインって何かツキが悪そうでいやだな。かわいそうだ。これは遣るまえに死んでいいや。

 タスクを書きだしたことによってなにかが変わるかと思ったが「あぁーやらなきゃなぁ、どうせ死ぬけど」が「やらなきゃ迷惑掛かるしやらなきゃなぁ、どうせ死ぬけど」になった程度で、劇的な効果はなかった。

 

┃虚無

 という液体が身体をめぐる、めぐる、めぐる。

 

┃虚無

 

 どうでもいいんだ何もかも

 

┃虚無

 

 

 シリウスみたいになりたいと思った。シリウスはもはやわたしにとって恋愛対象ではなくあこがれだった。あんなふうになりたいと思った。なれなかった。なれなかった。なれなかった。

 わたしはシリウスになれなかった。そのことがたぶん何よりも悲しい。

 

 

┃虚無

 

 

 

 

┃虚無

 

 

 

 

┃虚無

 

 

┃虚無

 

┃虚無